2018年、11月4日 21人が終わる日。
彼女の卒業は決して円満な形ではなかった。特に欅坂というグループの色を表現する難しさと、思い描く理想の形とを中和し切れていない部分が後半は見受けられた。メンバー間で何か起こっていたのかは知る由もないが、グループに向き合うことで衝突していたであろう葛藤は見ている側にひしひしと伝わっていた。
欅坂と今泉の両者を見たときのパワーバランスは明らかに重すぎて傾いていた。
今泉は欅坂の単なる「操り人形」になることを選ばず、独裁と中間管理職化する構図を破ることに失敗してしまった印象だ。
彼女は、メンバーも運営も夢も、変えていく時間に逆らっていたように思える。
いくらパフォーマンスをしても、言葉を重ねても分かり合えないことも知らず。でも、大丈夫。
それぞれがバラバラになって、それぞれが夢を叶えて、また巡り合うときに偶然は運命になる。そのことを一番知っているのは彼女たちだ。
なぜなら、二人セゾンをあれだけ噛み締めて歌っていたから。
これから、イベントに参戦しなくても、メンバーと連絡を取り合わなくてもいい。
もしも明日に逸れて答えが何も見えなくなった時、何かの間違いでも。欅坂のことを思い出して楽曲に耳を傾けていくれるようなことがあればそれで。
「皆様が理想とするアイドルになれなくて、期待に応えられなくて。すいませんでした」
この文言だけは不必要だと感じた。また予期していなかったもので、残念であった。
しかし、彼女も吐き出さないとやっていられなかったのだろう。そう察してあげるのが良い着地点だと考える。
この3年間、様々な紆余曲折を経て辿りついた結末は、決して後味の良いものではなかった。最近では平手と入れ替わりで離脱したり、個人の仕事を優先したり非難されることもしばしば。しかし、真ん中を狙い続ける貪欲な気持ちや、天真爛漫な性格で未来を照らしていたのも事実。
常に欅坂という細胞を奮い立たせ続けていた彼女。つられるようにファンが唱える笑う欅坂。
その声が運営側に少しでも恒常的に届くようなことがあれば、少しでも未来は変わっていただろうか。
それ中で儚く消えていくその姿はまるで、21人の未完成を象徴している。